模写って結局どうすりゃいいの?プロ・神絵師の意見を参考に考えてみた

イラスト練習法

こんにちは、たんく(@tankoekaki)です。

突然ですが絵の練習法と言えば何が思い浮かびますか?

デッサン・クロッキーなどもありますが、二次元イラストを中心に書いている人であればやはり『模写』が定番の練習ではないかと思います。

ただこの模写、人によって目的や方法が様々です。

寸分の狂いもなく描き写せという人もいれば、ただ描き写すだけではダメという人もいます。

この『模写論』については昔からネットのお絵描き界隈でも議論の的でした。現在ではYouTubeなどで実名プロによる有益なイラスト講座が見られるようになりましたが、現役のプロ同士でも意見が食い違うことも。

そこで今回は、プロ・神絵師の模写に対する考え方をまとめてみました。

YouTubeで活動している方が中心です。

模写練習に取り組んで入るもののイマイチ今のやり方が合っているのかわからない……

そんな悩みを抱えている人の大きな手助けになるかと思います。

スポンサーリンク

さいとうなおき

模写は見る練習

現役のプロイラストレーターであり、イラスト講座系のYouTuberとしても活躍しているさいとうなおきさん(@_NaokiSaito)。

模写については動画内で以下のように語っています。

模写はですね。描くためにやるんじゃありません。よく見るために模写をするんですね。

今書き写した眼はお手本と全く同じように描けているか?もし違うならどこが違うのか?どう描けば同じような眼になるのか?お手本と何ミリずれているのか?

それを穴が空くほどよく見ること!『描く』という行為を通じて『見る』精度を上げること!僕は「認識の解像度を上げる」なんていう風にも言っていますが、これが模写をする意味なんです。

【誰も教えない】本当に効果のある練習法とは!? -さいとうなおき-

模写は描く練習ではなく見る練習。さいとうなおきさんは他の場所でもこの理論をたびたび主張しています。

焼まゆる

模写とは研究である

焼まゆるさん(@yaki_mayu)はお絵かき講座を中心に動画を投稿しているVTuberです。

以下の動画で模写のことを「課題を克服するために分析と実践を行う研究」だと表現しています。

ただ何も考えずボケ~っと模写してもダメです。模写では『分析と習得』をしっかり意識して行いましょう。

模写の中で自分がやっていない描き方・自分と違う描き方を見つけてみましょう。そして実際に描いてみることで今までの自分の感覚とは違う新しい描き方を体験することが出来ます。一度描いてみれば、実際に自分の絵を描くときに使いやすくなると思います。

実は、模写はしなくてもいいんです。絵を眺めて研究するだけでも似たような成果が得られます。

【模写って意味あるの?】模写のコツ・やるべきことを、プロが教えます!【イラストの練習方法】 -焼まゆるのお絵かきちゃんねる-

模写で重要なのはお手本を観察し、どう描かれているのかを分析すること。

ただし、実際に手を動かしてみることで気づいたり身についたりすることもあるので、やはり模写は有効な手段だと言っています。

伊東ライフ&犬山たまき

目と手をつなぐ練習

言わずとしれた超有名同人作家にしてバ美肉おじさん(@itolife)。

同じく同人作家(として活躍していた佃煮のりおさんがママ)の犬山たまきさん(@norioo_)とのコラボ配信で、模写について以下のように語っています。

伊東「イラストも漫画も結局、頭の中にあるものをペンタブや紙に変換する作業だと思うんですよね。絵はどこまで行ってもこの作業なので、『左にあるものを右に写すこと(模写)』ができないうちは、頭の中のものを手元に移すことが出来ないと思うんですよ

犬山「目と手をつなぐ練習

犬山「見たものをそのまま描けるようにならないと模写って成功ではなくて、それを成功するためにやっていくのが模写」

【犬山たまき】#たまライフ が答えます!絵描きになるにはどうすりゃいいの!【伊東ライフ】 -伊東ライフ-

頭の中にあるおぼろげなイメージを紙の上で表現するには、まず手元にある対象を写し取る能力がなければ無理。

模写はその能力を鍛えるためのトレーニングだ、と定義しています。

アニメ私塾

元アニメーターであり現在は『アニメ私塾』の講師として活動している室井康雄さん。

模写については自分の先入観や手癖に囚われずに各パーツの比率と位置関係を守って描くことが大切だと語っています。

hide channel

絵の描き方を考察する

hide channelさん(@hide12862152)はプロのアニメーター。キャラクターの描き方を中心に解説動画を上げているYouTuberでもあります。

hideさん曰く、模写は「応用の効く公式を導き出すこと」が重要だとのこと。

(模写を通して)自分で考察して何かしらの公式をその絵から見つけるようにしてください。

形を正確に取るっていうのも大事なんですけど、それプラスその人の思考を読むというか描き順みたいなものを考察するんですね。

模写はできるけど見ないと描けない原因はコレ!本当に効果がある模写のやり方とは?

ただ模写するだけでは答えを暗記しているようなもので、公式を導き出さなければ応用が効かない。模写を通して描き方の理屈を考察することが重要だと語っています。

漫画素材工房

造形を正確に再現する練習

漫画素材工房さんは漫画素材の販売や人体の描き方講座を中心に活動しているプロの漫画家です。

模写については「細部の造形を正確に再現する技術」と表現しています。

「模写練習は描く力を鍛えるため」と考えている人が多いのですが、模写の本質は「観る力を鍛えること」です。

様々な方法を使い脳の錯覚を打ち破って考える力とセットで鍛えましょう。

【シルエットが命!】模写の技術が急成長する5つの戦略【5 strategies for training copying skills】-漫画素材工房-

模写では正確に模写元の形を捉えることを第一と考えているようです。動画内では、正確に造形を再現するための具体的な考え方やテクニックを解説してくださっています

なつめさんち

ただ写し取るだけではダメ

『プロ絵師夫婦YouTuber』という、珍しい肩書を持ったコンビ(@natsume_sanchi)です。

なつめさんちさんは模写のやり方を間違えると時間の浪費になるため、『正しい模写』を行うことが大事と語っています。お二人の言う正しい模写の定義は以下の通り。

①模写の目的を決める

げん「何やるにしても目的って大事で、ホントに何も考えずにただただ漫然と模写をする?」さや「そう、おんなじ絵を作りたいって目的じゃダメよ」

げん「模写をすることで自分はその人の絵の何を学びたいか?何を描けるようになりたいのか?」

②お手本を観察し技術を見つける

げん「絵に描いてあるものをそのまま写し取るんじゃなくて(中略)どういう意味で描かれているのかをしっかり考えながら模写する」

③完成したら見比べて反省する

げん「反省すべき点・出来なかったところが次の課題になる」

【ただ模写しても上手くなりません】プロ絵師から見て「模写って意味あるの?」【初心者向けお絵描き・イラスト講座】Speed Drawing in 2HOURS -なつめさんち-

ただ写し取るだけではコピーしているだけ。「その絵を模写することで何を学びたいのか」を明確化し、観察と反省を繰り返すことが大事だと語っています。

湊ゆう

ポーズやバランスを覚える手段

湊ゆうさん(@minato_yu34)はYouTubeでイラスト講座やお絵かき配信を主に行っているイラストレーター。

ご自身が行っている模写練習を動画で解説してくださっています。

模写練習は、自分の参考にしている絵師さんや良いなと思ったイラストのポーズや描き方全体のバランスを描いて覚えることで自分の作品に活かす、っていう練習法だと思っています。

自分の模写練習は似せることが目的ではないので、あくまで全体的なバランスやポーズを真似させていただくという感覚でやっているので、結構ざっくりとした部分とか雑に描いてしまう部分は全然あるんですけど、イラストのポーズを模写したか?っていうのがわかればこの模写練習は成功したと思ってください。

「それクロッキーじゃね?」って思った方いると思うんですけど、自分の中での模写練習っていうのは髪や目、服などを描くバージョンのクロッキーだと思っています。

【お絵かき講座】湊ゆうがやっている模写練習法一から教えます!-湊ゆう-

模写は自分の中の引き出しを増やすための練習であり、時間をかけずにざっくりと全体のバランスを取るというクロッキー的な感覚で行っているそうです。

シルエットを追ったり細部まで書き込む模写については完全にダメなわけではなく「求めている練習効果が違う」と表現しています。

個人的な考察

ここからは僕の個人的な考察コーナーです。読む価値はないかも知れません。

模写の目的は大きく分けて2つ

さて、ここまでイラストレーター・漫画家・講師など、様々な分野のプロから模写に対する意見を集めてみました。

やっぱり考え方は人それぞれで、みなさん同じことを言っているわけではありませんね。

ただ、今回集めた意見は以下の2つに大別できると思います。

  • 模写は正確に写し取るべきだ
  • コピーするだけでなく何かを学び取るべきだ

では、この2つのうちどちらかが正しくてどちらかが間違っているのか?……という訳ではないように思えます。

恐らくですが、模写練習について対立する考え方が存在するのは模写に求める練習効果が異なるからではないでしょうか。

正確に再現する模写は観る力を鍛えるデッサン的な練習。正確さ以外を重視する練習はポーズや構図、マンガ絵特有の描き方やデフォルメの仕方を学ぶための練習。

こう捉えると、どちらの意見も矛盾なく正しい練習方法であると考えることができます。

スポンサーリンク

目的意識を持つことが重要

つまり、模写練習で重要なのは目的意識を持つことです。

ただ手を動かして7割がた似てる絵を描いても効果的な練習にはなりません。

見る目を鍛えるための模写なら、重ねた時に全ての線がピッタリ合うくらいの完成度を追求する。

お手本から学びを得るための模写なら、何を学びたいのか具体的に設定して考えながら模写をする。

これが神絵師の言うところの『効果的な模写』ではないかと思います。

まとめ

今回いろいろ調べてみた上での個人的な結論は以下の通り。

効率的な模写練習のコツ

模写練習は具体的な目的を定めることが重要である。

模写の目的は大きく分けて2つ。

  • 観る力を鍛える
  • お手本を分析して描き方を学ぶ

神絵師たちの理論が元になっているので説得力はかなりあるはずです。これでもう模写しながら「本当にこのやり方でいいんだろうか?」なんて迷う必要もありません。

あとは偉大なる先人の教えに沿ってひたすら練習を積み重ねればいいだけ。

そう、ひたすら練習……